ドミニク・ウェスト

あの本は処分される

〜「コレット」㉑〜

  あの本は処分される   訪問しようとして、夫人の部屋を見上げたコレットは窓に夫の姿を見た。 いつの間に、あいつ。 怒り心頭。階段を駆け上がりドアをガンガン。 三角関係が発覚。 「穏やかな解決は無理なのね」と夫人。 事情を知った夫人の夫は出版元に金を払い 「あの本は処分さ...

綺麗な歯をしている

〜「コレット」⑳〜

  綺麗な歯をしている   大邸宅です。螺旋階段を上がり夫人の部屋に入るコレット。 言葉は不要。 コレット「目をそらさないで私を見て。あなたを見る私を」 大胆に向き合う。 夫人「綺麗な歯をしている」 コレット「ワニみたい?」 まさに肉食系のお二人の行為でありました。 帰っ...

まあ、髪が…直った

〜「コレット」⑲〜

  まあ、髪が…直った   夫人のテーブルに座ったコレットは 彼女の額にかかる巻き毛に指を触れ「まあ、髪が…直った」 無言の微笑が交わされる。 夫人は軽く挨拶をして去る。 「招待を受けたのは君だ」とウィリー。 「行くべき?」 「もちろん」 「かまわない?」 招待を受ける...

パリのクロディーヌ

〜「コレット」⑱〜

  パリのクロディーヌ   「パリのクロディーヌ」が出版された。 ブローニュの森を歩いているウィリーとコレットを見て (あれがウィリーとコレットよ)と囁きが交わされる。 今や彼らは有名人だ。 少し離れたテーブルに座るラウル・デュバル夫人からの招待状を メイドが持ってきた。 ...

次のクロディーヌを書け

〜「コレット」⑰〜

  次のクロディーヌを書け   閑静な田舎にウィリーは別荘を買った。 「君の家だよ。田舎を恋しがっていただろ。 静かな場所で、独りで書けるよ」 でもどうやってお金は?  「2万5000フランの前金が入った。次のクロディーヌを書け」 ウィリーは着々と「金のなる木」に投資し始めま...

ウィリーの新作は世界を変える

〜「コレット」⑯〜

  ウィリーの新作は世界を変える   「学校のクロディーヌ」は作者ウィリーとして発表された。 瞬く間に反響を呼び「ウィリーの新作は世界を変える」と絶賛。 「パリ中の人々が彼を天才だと賞賛している」とシュウォヴ。 「あなたは?」とコレット。 「あの本を書いたなら天才だ」とシュウォ...

私の興味は奥様よ

〜「コレット」⑮〜

  私の興味は奥様よ   コレットはガストンという劇作家に紹介された。妻を同伴している。 親しげに彼と会話が弾むコレットを見て、ウィリーは面白くない。 帰りの馬車で嫌味を言うと、コレットは 「的外れな嫉妬よ。私の興味は奥様よ」 あっさり同性への関心を表明し「どう思う?」と夫に聞...

正気を保つために書いている

〜「コレット」⑭〜

  正気を保つために書いている   ウィリーには何人かのゴーストライターがいます。 シュウォヴはその一人。コレットも書き始めたと知り 「例の本は?」と訊く。 「ウィリーのお気に召さなかった。名を残さず死ぬわ。あなたは?」 「書いているだけだ」シュウォヴは寂しそうに言い 「だが...

歴史を作るのはペンを握る者

〜「コレット」⑬〜

  歴史を作るのはペンを握る者   「人々が求めるのは心を揺さぶる力強い物語だ」とウィリー。 コレットは目を輝かせる。 「何を書いてもいいの?」 「そうだ。歴史を作るのはペンを握る者だからね。君には脱帽だ」 持ち上げておいて「だが…」 「ズバリ言って」 「物語を動かす筋がな...

学校のクロディーヌ

〜「コレット」⑫〜

  学校のクロディーヌ   コレットは書き始めました。 「私の名はクロディーヌ。モンティーニに住んでいる。1873年、 そこで生まれた。死ぬのは別の町だろう」 素直な書き出しを読んで「そうか、才能あるんだな」と夫のウィリー。 彼も才能のない男ではない、自分で書くのはともかく、 ...