アイザック・レイバ

信じてほしい、愛する人よ

〜「チョコレートドーナツ」(41)〜

  信じてほしい、愛する人よ   ルディがデビューした。 最前列にポールが聴きにきている。 「人は誰でも守られるべきだといい その一方で打ちのめされろという はっきり見える もう1人の私が この壁の向こうに はるか向こうに 私の光がやってくるのが見え...

ハッピーエンドが大好きでした

〜「チョコレートドーナツ」(40)〜

  ハッピーエンドが大好きでした   「マルコは心のやさしい、賢く、楽しい少年でした。 笑顔が辺りを明るくしました。 チョコレートドーナツに目がなく、ディスコダンスの達人でした。 寝る前の物語が大好きで、 せがむのいつもハッピーエンドでした」 判事や公選弁...

新聞記事を同封します

〜「チョコレートドーナツ」(39)〜

  新聞記事を同封します   ポールがタイプライターを打っている。 手紙の宛名人は、裁判に携わった判事、公選弁護人だ。 「新聞記事を同封します。小さく埋もれた記事です。 知的障害のあるマルコという少年が、3日間家を探し歩いたすえ、 橋の下でひとり死んだそうです。...

正義などないんだ

〜「チョコレートドーナツ」(38)〜

  正義などないんだ   「正義などないんだ」嘆くポールに ロニーは「法律学校で最初にそう教えられなかったか?」 母親に引き取られたマルコは元の生活に戻った。 ドラッグをやって男を引き込む母親はマルコを廊下に出し 「ママがいいというまでそこにいるのよ」 マ...

お手上げだ。母親には勝てない

〜「チョコレートドーナツ」(37)〜

  お手上げだ。母親には勝てない   ポールとルディには、マルコへの接近禁止命令が出された。 「お手上げだ。母親には勝てない」 ロニー弁護士も音をあげた。 実の母親が責任持って子供を育てると言っている以上、 他人は手を出せない。 しかしあるべき親子の実態と...

原告の訴えを棄却

〜「チョコレートドーナツ」(36)〜

  原告の訴えを棄却   再審に臨んだポール側は判事の意外な言葉を聞く。 「原告の訴えを棄却するまえに、母親の証言を」 「棄却とはなんです。いきなり説明もなく棄却するのですか」 法廷に現れた証人はマルコの母だった。 「いつ出所を?」 「ディレオンさん(母親...

ゲイの場合、勝ちは不可能だ

〜「チョコレートドーナツ」(35)〜

  ゲイの場合、勝ちは不可能だ   ポールとルディは控訴を決め ロニー・ワシントン弁護士に依頼した。 「判事とマルコの公選弁護人が僕たちに偏見を持っている」 「黒人のオレは偏見にさらされない? 白人の弁護士にことごとく断られたのだろ? ゲイの場合、まず勝ち...

子どもが混乱を起こす

〜「チョコレートドーナツ」(33)〜

  子どもが混乱を起こす   結論に至った。 「両氏(ポールとルディ)はマルコに素晴らしい経験を与えました。 自身よりマルコを最優先に考え、便宜を図りました。しかしながら 見逃せない事実があります。 両氏の愛情は明らかですが、子供を時折、不適切な状況に置いたと ...

施設から永遠に出られないマルコ

〜「チョコレートドーナツ」(32)〜

  施設から永遠に出られないマルコ   ポールが立ち上がった。 「一体、何の審理です。ゲイだの、人形だの、そんな話ばかりだ。 本題をお忘れですか。これはマルコの審理です。 今もどこかの施設に入れられ永遠に出られないマルコです。 この世に背が低く太った知的障害児を...