ゲイ映画のキメ台詞

死の虚空なのだ

〜「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」⑭〜

死の虚空なのだ ジョージとの関係は最悪に陥る。ベイコンは穏やかな関係を維持する能力が、自分に欠落していることがわかっている。孤独はむしろ創作に必要な環境だ。ジョージはちがう。安らぎやなぐさめや、和やかな関係の中で一緒に生きていきたい。ベイコンはジョージがうとましくなる。「耽美には儚さが伴う。彼のほうけた顔に広...

関係を維持する能力の欠落

〜「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」⑬〜

関係を維持する能力の欠落 ベイコンと気持ちが通い合わなくなって、ジョージは悪夢に悩まされるようになる。毎夜のようにうめく。ベイコンは思う。「関係を維持する能力の欠落。情熱を吸い尽くす創作は、心をおびやかす。優しさは絵筆を通してしか表せないのか。それすらわからない。本能で伸ばす手。背骨の曲線に沿って走らせる指先...

わたしの彼女が最高に上手なの

〜「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」⑫〜

わたしの彼女が最高に上手なの テーブルを囲んだ顔なじみたちが、牡蠣やロブスタをむしりながら喋っている。レモンを絞った牡蠣の汁をチュチュッとすする音があちこちで。バーの女将のティルダ・スウィントンが何気に「わたしはオラルのみよ。わたしの彼女が最高に上手なの」「ちょっと」と誰かが制し「シーフードがだいなしよ!」ホ...

相手の男の快楽のためにのみ

〜「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」⑪〜

相手の男の快楽のためにのみ存在する 「相手のためにひたすら尽くすのはカタルシスだ。すべての責任を放棄し、命令で動き、自ら決断することは何もない。相手の男の快楽のためにのみ、存在するのだ」ここでいう相手とはベイコン自身のこと、つまり、ジョージはベイコンの快楽のためにひたすら尽くす、ベイコンの命令で動き、自ら決断...

秘密の部屋

〜「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」⑩〜

秘密の部屋 「快楽の館に足を踏み入れたわたしは、世間並みの愛を交わす部屋にはとどまらず、秘密の部屋に入っていき横たわった。口にすることさえ恥とされる秘密の部屋。わたしはそんな恥とは無縁だ。そうでなくてだれがアーティストになれよう」ベイコンの芸術家としての自負がみなぎっています。でも、ちょっと大げさな気がするけ...

ジョージは特別だ

〜「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」⑨〜

ジョージは特別だ いくら20世紀最大の画家だとしても、どうにも好きになれないのがフランシス・ベイコンでした。肉塊、恐怖、苦痛、歪みに歪んだ肖像、どの絵も快適さを拒否し、もし部屋にかけておけば悪夢になりそうな絵ばかりです。ベイコンはきっと複雑きわまりない人物だったのでしょう。そんな彼がジョージをこういいます。「...

どう見てもいかれた連中だ

〜「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」⑧〜

どう見てもいかれた連中だ 「最近どうしている」とジョージは古い友人たちに聞かれる。「ベイコンの手伝いをしている」「あの手の連中には気をつけろよ、ジョージ。人種がちがう。 どう見てもいかれた連中だ。用がすんだら。ポイと捨てられるぜ」 あの手の連中という言い方がゲイに対する世間の警戒を 露骨に示しています。「心配...

気取りやがって

〜「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」⑦〜

気取りやがって 「先日の店のソースだらけの料理はまいった」バスタブに浸かりながらジョージが話している。「ナイフとフォークは一組で充分なのに。ウェイターもハゲタカみたいに待っているし」ジョージは高級なレストランより下町のパブのほうがいい。社交家で取り巻きが好きなベイコンとはちがう。「君とふたりだけがいい」「わた...

あんたは自分しか愛せないんだ

〜「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」⑥〜

あんたは自分しか愛せないんだ 「あんたは自分が可愛いのさ、自分しか愛せないんだ」ミュリエルは写真家のディーキンを吊るし上げている。彼は嫌われ者らしく、客たちが「クズめ」と容赦なく罵る。「あんたは空間の無駄なのよ、ヒトラーよりケチだよ。人にたかって自分の金を出さない」とミュリエル。絵描きや写真家が集まる酒場のワ...

君といると新たな力が湧いてくる

〜「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」⑤〜

君といると新たな力が湧いてくる ベイコンはジョージに新しいモティーフを見出します。けれど彼の言葉は辛辣で、残酷です。「君はモティーフになるよ。箸休めのシャーベットに似ている。たまには苦いこともあるが」泥棒出身の、ロクでもない男だという前提でベイコンはジョージを見ていますから、全て上から目線です。「箸休め」だな...