Diversity Studies

ダンスが好きなんだ

〜 「トム・オブ・フィンランド」15

ダンスが好きなんだ   ヴェリを一目見てビンビンときたトウコ。 後をつけ、彼が前衛のダンサーで舞台に出演しているとわかる。 何食わぬ顔で劇場に行く。 妹がヴェリと来ていた。 「トウコ、奇遇ね」 「ダンスが好きなんだ」にわかダンスファンを装い 一緒にヴェリの舞台を...

新しい下宿人がくるわ

〜 「トム・オブ・フィンランド」14

新しい下宿人がくるわ   トウコは男が好きであることをどうしようもない。 革ジャンと長靴を買い、ルッキングからマッチョに変えた。 「なに、その格好?」妹が不審がる。 「新しい趣味だ」 妹は「新しい下宿人がくるわ」と告げた。 名前はヴェリ・マキネン。 トウコの生涯...

ただの紙切れじゃない、爆弾だ

〜 「トム・オブ・フィンランド」12

ただの紙切れじゃない、爆弾だ   「こんな絵を描いた」とトウコは大尉に見せた。 「ただの紙切れなのに、なぜひどい目に遭う?」 「ただの紙切れじゃない、爆弾だ」 社会の良俗とモラルと体制を否定する絵だ。 トウコが思っているより重い罪になる。刑務所送りだと。 助かる方法と...

お前のような男はガス室送りだ

〜 「トム・オブ・フィンランド」11

お前のような男はガス室送りだ   取り調べ室の担当者が毒づいた。 「昔ならお前のような男はガス室で死んだ」 ナチの収容所でもゲイは差別されガス室送りでした。 どっちを向いても助からない過酷な運命。 来てくれた大尉は地獄に仏です。 「ラークソネン中尉です。あなたの部隊で...

ヘイッキ・アリョキ大尉を

〜 「トム・オブ・フィンランド」10

ヘイッキ・アリョキ大尉を   トウコの受難は続く。 宿泊費の支払いを請求され、振り逃げしたトウコは 捕まって警察に勾留された。 身元引受人はベルリンにいない。 思い出したのがフィンランドで一緒に戦ったアリョキ大尉だ。 別れ際にシガレットケースをくれた軍人。 ヘイ...

風景画専門の画商だ

〜 「トム・オブ・フィンランド」9

風景画専門の画商だ   1人が興味を持った。 「田舎の風景画だ」とトウコ。 「風景画専門の画商だ」と男。 フィンランドで出版をしている、らしい。 一夜を共にした。 やっと巡り合った、と思えた男は翌朝、姿を消し、 トウコの絵をごっそりかっぱらってトンズラした。 ...

「アートを買う気は?」

〜 「トム・オブ・フィンランド」8

「アートを買う気は?」   ベルリンの夜だ。酒場に入る。 トウコがいくのは公園かバーだ。男たちが集まる場所。 同性愛が違法で、袋叩きになる時代ですから、 パートナーを探すのは至難です。 今みたいにカミングアウトもできない。 ひょっとしたら“巡り合うかもしれない”ところ...

「なぜドイツへ?」「遊びに」

〜 「トム・オブ・フィンランド」7

「なぜドイツへ?」「遊びに」   トウコはベルリン行きの列車にいる。 警察がパスポートを点検する。 国境を越えるのはまだ大変だった。 「なぜドイツへ」「遊びに」 だがトウコはトランクの底に絵を隠していた。 ムキムキの裸の男たちだ。これこそ彼が部屋にこもって 密か...

これじゃダメだ、描き直せ

〜 「トム・オブ・フィンランド」6

これじゃダメだ、描き直せ   作品をディレクターに見せるが 「これじゃダメだ、描き直せ」突き返される。 彼の頭の中にあるのはマッチョな男性像、 殺したソ連兵が脳裏に浮かんでは消える。 一般的なイラストには情熱が注げません。描き直しばかりだ。 描きたい絵を描いて、受け入...