Diversity Studies

続きは音楽の都ミラノで

〜「燃ゆる女の肖像」(15)〜

  続きは音楽の都ミラノで   曲はビヴァルディの四季の「夏」だった。 お嬢さまは興味深そうに、マリアンヌの弾く傍に腰掛け鍵盤を見る。 「嵐が近づきます、虫たちが騒ぎ出す、稲妻と暴風… 音が拾えない。続きは音楽の都ミラノで」 嫁ぐ先のミラノは「魅力的な街」だとい...

一人なら自由?

〜「燃ゆる女の肖像」(14)〜

  一人なら自由?   「明日は一人で外出できます。自由です」そうマリアンヌが告げる。 「一人なら自由?」お嬢さまが聞き返し「確かめます」 このお嬢さま、マリアンヌが考えているより、 ずっと思慮深いと思えるのです。一人なら自由なのかと、問うあたり。 でも嬉しかっ...

お嬢さまは怒っているだけです

〜「燃ゆる女の肖像」(13)〜

  お嬢さまは怒っているだけです   肖像画が進まない。外にいる時間が長すぎる。 そうマリアンヌから聞いて伯爵夫人は娘を外に連れ出すことにした。 「その間に描いて」 「お一人で外出させれば? お嬢さまは怒っているだけです」 思うに任せない日常の行動に腹を立ててい...

選べる人にはわかりません

〜「燃ゆる女の肖像」(12)〜

  選べる人にはわかりません   お嬢さまのやや不機嫌な問い返しに、マリアンヌは話題を変えます。 「修道院はお好き?」 「修道院には音楽も図書館もありました。それに皆が平等です」 「私は息苦しくて逃げ出しました。 ノートに絵を描いては怒られた」 「絵を描く...

一度も笑わないの

〜「燃ゆる女の肖像」(10)〜

  一度も笑わないの   ソフィが成果を聞いた。 「どうでした?」「難しい」とマリアンヌ。 「いつも前を歩くし、浜辺では独りを好む。一度も笑わないの」 「おたがいさまでは」というソフィにマリアンヌは苦笑する。 マリアンヌはお嬢さまに本当のことを言っていない。 ...