Diversity Studies

選べる人にはわかりません

〜「燃ゆる女の肖像」(12)〜

  選べる人にはわかりません   お嬢さまのやや不機嫌な問い返しに、マリアンヌは話題を変えます。 「修道院はお好き?」 「修道院には音楽も図書館もありました。それに皆が平等です」 「私は息苦しくて逃げ出しました。 ノートに絵を描いては怒られた」 「絵を描く...

一度も笑わないの

〜「燃ゆる女の肖像」(10)〜

  一度も笑わないの   ソフィが成果を聞いた。 「どうでした?」「難しい」とマリアンヌ。 「いつも前を歩くし、浜辺では独りを好む。一度も笑わないの」 「おたがいさまでは」というソフィにマリアンヌは苦笑する。 マリアンヌはお嬢さまに本当のことを言っていない。 ...

結婚を拒否している

〜「燃ゆる女の肖像」(5)〜

  結婚を拒否している   母親の伯爵夫人に会う。 「娘の結婚相手はミラノの人よ。 あなたの描く肖像画が気に入ればミラノに輿入れする。 前に男性の画家が来たけど、娘は顔を隠して一度も見せなかった」 「何か理由が?」 「結婚を拒否しているから肖像画を描かせな...

お嬢さまは最近きた

〜「燃ゆる女の肖像」(4)〜

  お嬢さまは最近きた   描く相手はどんな女性なのか。マリアンヌは探りを入れる。 メイドのソフィは「よく知らない」でも「お嬢さまは最近きた」 「以前は?」「修道院よ」 「なぜここに?」「お姉さまが死に、結婚話がくり上がったの」 「病死なの?」「ちがう」 ...

「居心地は?」「いいわ」

〜「燃ゆる女の肖像」(3)〜

  「居心地は?」「いいわ」   少女のようなメイドが古めかしい、重い木の扉を開けた。 手燭の明かりをかざし部屋に案内する。 だだっ広いガランとした室内に暖炉が燃えている。 季節は12月。火を起こしておいてくれる親切はある。 メイドは3年前からいる。素朴な地元の...