いっしょに頑張りましょう
ボーヴォワールは続ける。
「あなたの原稿をカミュ(ガリマール書店の編集者)に渡そうと思うの。
急いで修正して。父親のことも具体的に。
私生児を産ませた卑怯な男よ。掘り下げるの。
1週間か10日で仕上げて、その時にまた。
おめでとう。いっしょに頑張りましょう」
なんと、ボーヴォワールは
パリの一流出版社から発行すると約束したのだ。
終戦後の混乱の時代、才能ある女性が世にでるために
協力を惜しまないボーヴォワールの
「いっしょに」という力強い言葉。
ふたりがほぼ同い年というのも幸運だった。
ボーヴォワールはとんがった知的な女性で、
かなり気難しい面もあったと思えるのですが、
ヴィオレットには気の置けない友だちのように付き合います。
それがヴィオレットには苦しくなるのですけど。
〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」〜