続きは音楽の都ミラノで
曲はビヴァルディの四季の「夏」だった。
お嬢さまは興味深そうに、マリアンヌの弾く傍に腰掛け鍵盤を見る。
「嵐が近づきます、虫たちが騒ぎ出す、稲妻と暴風…
音が拾えない。続きは音楽の都ミラノで」
嫁ぐ先のミラノは「魅力的な街」だというマリアンヌの言葉に
「あなたにそう言われると慰められる」
お嬢さまは喉につかえた骨みたいに、どうにもこうにも
結婚がうとましいらしい。
魅力的な街だと聞いてせめてもの慰めを感じる、なんて気の毒。
〜「燃ゆる女の肖像」〜