夢見ていました
お嬢さまは背を向けたまま、開けたドアから明るい外を見ていた。
カッ、カッ。靴音も高く歩き出し、やにわに走った。
フードをはねのけ、豊かな金髪が現れる。
息せき切って追いかけたマリアンヌを振り返り微笑して言った。
「夢見ていました」
「死を?」
(姉のことがあるから、妹も入水でもするかと思ったのでしょう)
お嬢さまの答えは即物的で健康だった。
「走ることです」
伯爵夫人は姉のようなことをされたら大変と、
外出を禁止していたのです。
〜「燃ゆる女の肖像」〜