海を見たことがない

 

海を見たことがない

 

「海を見たことがない。アフリカへ行きたい。砂漠を歩きたかった。

太陽が欲しいんだ」とランボー。

「どこへ行きたい?」「わからない。とにかく行きたいんだ」

「俺はマチルドを置いていけない」

「では行くな。彼女と残れ」

ぐじゃぐじゃ言いながら、結局ヴェルレーヌは一緒に旅に出るのです。

ヴェルレーヌはランボーから離れられない。

しかしランボーもそうだったと思うのです。

自分がエゴの塊で、

円満な人間関係は結べないことをランボーはわかっている。

ナイフを突き刺そうと弱虫と罵しろうと、

ひたすら受け入れてくれるヴェルレーヌは、

ランボーの安息でした。

 

 

〜「太陽と月に背いて」〜

 

 

bn_charm