話すことがある。辛いことだ。

 

話すことがある。辛いことだ。

 

意識がもうろうとしてきたテルマにパパが告げる。

「話すことがある。辛いことだ」

湯船にいたはずの弟がいなくなった。「弟はどこだ。何をした」

少女のテルマは窓の外の湖を指さした。

パパが探しに行くと、凍った透明の氷の下に弟が死んでいた。

母親はショックで自殺を図った。命はとりとめたが車椅子になった。

両親はテルマの成長が恐ろしく、強い薬で抑制し、記憶をなくし、

信仰に入らせ、敬けんなクリスチャンにしたのだが、

激しい念動力がいつ発動するかと思うと生きた心地がしない。

大学に行っても、テルマの行動を逐一聞き出し、

何か変化があるかないか確かめていた。

でもテルマのパワーはテルマのせいじゃないでしょう。

その力が悪用されると信じている両親の方がよほどおかしくない?

弟の事件は悲劇だったけれど、

生まれた赤ん坊に上の子が嫉妬する例はよくあるし、

ましてパパは医師なのだから、もっと冷静に対処できたのでは?

 

 

〜「テルマ」〜

 

 

bn_charm