歌を作ってやらなきゃ
キムが「何を歌ってくれる?」とシェリーに聞く。
「ペギー・リーのフィームヴァー」
メンバーは苦笑する。
「だれ、それ。たるい曲はやらないんだよ」
「ちがう曲は?」「練習してない」
みな顔を見合わせた。ジョーンが助け舟を出した。
キムにそっと耳打ち「歌を作ってやらなきゃ」
「よし、君はちょっと外へ出ていてくれ」
コンテナの外へシェリーを出し、ジョーンがギターをポロポロ、
口に出しやすい言葉を歌詞にする。
「ここはチ、チ、チだね」
シェリーが呼ばれた。これが「チェリー・ボム」だ。
「もう少し、こう、チ、チ、チ。そうだ、だいぶよくなった」
シェリーが舌足らずに「チ、チ、チ」
これが「ランアウェイズ」の起爆剤になるとは、
このときだれが予測したろう。「ランナウェイズ」の夜明け前でした。