悪口も盗みも許すけど…

悪口も盗みも許すけど…

 

秀子は「悪口も盗みも許すけど、ウソだけはつかないで」と命じる。

新入りの珠子は早速イジメにあい、靴の片方を盗まれた。

お嬢様は衣装室に連れて行き、クローゼットの上から下まで並んでいる

靴を見せ、「私は5歳で朝鮮に連れてこられてずっと家にいる」

どことなく寂しそうに言い、「ここからここまでの靴はお前に合うわ」

気前よく、好きな靴を選べと。

聞けば秀子の叔母は庭の桜の木で首をつって自殺したとか。

「家が大きくて気がふれた?」珠子は真剣にそう思う。

やがてお嬢様は、手袋ばかり入っている引き出しが5段、

その中から一つ選び、「正午に扉を叩いて。忘れないで」

謎めいた指示をして別棟に去る。

広すぎるうえ、妙な気配の満ちているミステリアスな家です。

 

(「お嬢さん」 )

 

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