夫の仕事が何か知っています?
あなたは家族の何を知っているか、夫の仕事を知っているか、他のことも、
と逆に兄嫁は訊きます。
ルイは答えられない。彼が家に帰ってきて、まるで捨てられたような扱いを受けているのは、
先に彼が家族を捨てたからです。
それを誰も責めていないけれど、兄貴も妹も根が正直だからつい口に出るのよ。
兄嫁の言葉はこう続きます。
「夫は、あなたが彼の人生に興味ないと信じ込んでいます。
自分のやることに、あなたが興味を持つなんてありえないと」
他人に関心の薄いルイの性格が浮かび上がってきます。
創作に打ち込むには、家庭や家族の雑事は煩わしかったのかもしれない、
しかし弟が兄である自分に興味を持つはずがないという断言には、
どこかさびしい響きがあります。人はエゴイストであってもいいけど、
エゴイストのみである必要はない、口下手な兄も、短気な妹も、
そう言いたかったのではないでしょうか。