愛に幻想を抱かないように

愛に幻想を抱かないように

 

「愛に幻想を抱かないように」メリッサは独り言のように言って

ビリティスを海辺の小屋の前に置いて去ります。

小屋は、ルカが観光客相手の写真を売る小さな店でした。

学校で文化祭の記念写真を担当したときから、

ビリティスの美しさに惚れていたルカはビリティスを見て喜ぶ。

このシーンなのですけどね。

水平線まで何もない海。

低い砂丘にポツンとある掘っ建て小屋。

つば広の帽子をかぶったメリッサがビリティスを残して立ちのく。

…ハミルトンには基本的に、成就されないものへの愛着、

失われるものへの執着というか、思春期は通りすぎる人生の一瞬、

取り返せない現在、はかなさに悶えるような切なさを込めています。

明るい陽光の中の海と空。打ち捨てられた小屋。

孤独な映像は「愛に幻想を抱かない」メリッサの心象のようです。

(「ビリティス」 )

 

bn_charm