私は最悪よ、隠しようもない

私は最悪よ、隠しようもない

 

シーバの家庭はバーバラの予想と大違いでした。

「夫は弁護士で子供たちはマトモかと。でも違った。夫はうんと年上。

娘はわがまま放題、生意気なお姫さま、息子は世話のやける道化師。

食後は一家でゾッとするダンス」

でもシーバは自宅の隠れ家と称するアトリエにバーバラを招き入れ、

悩みを打ち明けます。

「10年間、自閉症の息子の面倒を見てきた。社会に出て何かしたかった。

美術の教師になった。でも私は最悪よ。隠しようもない」

自分の能力に自信が持てなかった、さらに寂しかったのは

「結婚や子育ては素晴らしいけど、生きがいを感じないの。義務感は

あるけど、地下鉄とホームの間の隙間のように、夢の実現と現実の

間には埋めがたい空白があるのよ」。

この率直な告白、率直すぎて他人事と思えませんでした。

結婚している、いないに関わらず、シーバもバーバラも孤独なのです。

 

(「あるスキャンダルの覚え書き」)

 

 

bn_charm