君に会う前は俺にも人生があった
ジョージが声を出して新聞を読む。交通事故や、
占い、天気予報、日々のニュースだ。
刑務所を出たり入ったりしていたジョージは、学校も出ておらず
本を読みなれていない。黙読がなかなかできないのだ。
邪魔になるような大声とは違う。普通の話し声で、自分に聞かせる
ように読んでいるだけ。かわいいとさえ思える無邪気な姿だ。
ベイコンは邪険にいう。
「黙っていてくれ、君がいるだけでむさ苦しいのに」
ジョージは言い返す。
「いいよ、出て行くよ。俺にだって用がある。俺を待っている
友だちがいる。君に会う前は俺にも人生があった」
応えるセリフだわ。応えないのはベイコンだけね。