続いているならなお不幸さ

続いているならなお不幸さ

 

ゲイの芸術家たちがたむろするミュリエルの酒場。

女主人ミュリエルが誰あろう、ティルダ・スウィントン。

客に遠慮なく食ってかかり、彼女の毒舌と客の応酬で

店はいつも騒々しい。

「人の色恋にケチばかりつけていると、墓穴を掘るよ」と

ミュリエル。

「不幸なオカマの恋人たちをあんたの番組に呼ぶといい」と

誰かがやり返し、すかさずどこからか「不幸とは限らない」

ベイコンが「続いているならなお不幸さ。それが愛だろ」

身も蓋もありません。

ティルダは大きなお腹を抱え、カウンターの端に座って   

しどけなく壁にもたれ、誰彼なく噛み付く。

とっさにはティルダと見分けのつかない奇妙なメーク、

入れ歯で歯をむき出し、別人になっています。

今さら驚きませんが。

 

(「愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像」)

 

 

bn_charm