Vol.12 時代の歌にleft alone(前編)
道に倒れて誰かの名を呼び続けてみたい衛澤です御機嫌よう。
「冬来たりなば春遠からじ」と申します。
年が明けてきゅっと寒くなりはしましたが、夜明けの直前が一番暗い瞬間であるのと同様に、暖かくなる直前が最も寒いものでございます。
みなさん、最も寒い時期をよく耐えられました。矜ってよいでしょう。矜りましょう。
暖かくなって参りますと、私などは単車で走りまわりたくなります。原付単車にしか乗れませんが、とてもよく走る単車を先年入手しましたので、何処に行くのも専ら原付です。
片道100kmまでなら日帰りで何処でも参ります。道路交通法上、原付は時速30kmまでしか出せませんが、のんびり走るのもまた一興であります。
遠い距離を行くには時速30kmでは時間がかかりますが、音楽を聴きながら走るのはとても愉しいです。
2015年6月の道路交通法改正で「イヤホン自転車」が大量に検挙されてたけど単車も駄目じゃないのん?とよく訊かれますが、イヤホン単車も勿論駄目です。
じゃ音楽聴きながら単車運転しちゃ駄目じゃん!
ということになるかというと、そうでもないんですな。両耳イヤホンは間違いなく駄目なんですが、片耳イヤホンやヘッドセットなどの装着によって音楽を聞くのは、ほとんどの都市で取り締まりの対象ではないんです。
「ヘッドホン若しくはイヤホンを使用して両耳をふさぐ等安全な運転に必要な音や声が十分に聞こえないような状態で」運転すると「安全運転義務違反」で捕まって違反切符を切られることになりますが、両方の耳を塞いでしまわないようにした上で小さい音で再生するなどで周囲の安全に充分気をつけられる状態での音楽は、自動車でカーステレオを使用するのと同様の扱いとなる、とのことです。
(上記は警察庁の公式発表ではなく、私が個人的に或るおまわりさんに聞いた情報ですので、情報の取り扱いには充分ご注意ください。また、各都道府県の条例によっても少しずつ異なりますので、みなさんはそれぞれに道路交通法及び各都市条例と安全を充分に確認しながら運転に従事してください)
私はそのように聞いておりますので、耳を塞がないようにヘッドフォンをヘルメット内部に取り付けて、エンジン音の中でも聞き取れる最低音量で音楽を聴きながら走ります。この件でこれまで違反切符を頂いたことはありませんし、事故や危険なめに遭ったこともありません。
音楽を再生するのに使用するのはMP3プレイヤです。PCでプレイリストを作成してそれをプレイヤに入れておいて、洋服のポケットなどにクリップで留めて、ヘルメットに取り付けたヘッドフォンに繋ぎます。
だから、単車で移動した先ではいつも、着ている服にMP3プレイヤがくっついています。
或る日、知り合いと出会って話していた中に、私の服にくっついているMP3プレイヤを見た知り合いから、それにはどれほどの曲が入るのかという質問がありました。
「そのプレイヤにはレコード何枚くらい入るの?」
「LPで20枚は入りますよ」
何の疑問も違和感もなく当然の如くその質疑応答は行われまして、数瞬経って、私たちは顔を見合わせたのでした。
「レコードて」
「LPて」
メディアはデジタルになってそれを使用するようにはなっても、基準はまだアナログの昭和者なのでした。
いま風(?)に答えますと、私が使用しているMP3プレイヤには2GB入ります。
「LP」というのはCDで言うとアルバムCDに相当するもので、平均10曲程度入っているものです。だから、私が言いたかったのは「200曲は入りますよ」ってことです。
(後編につづく)
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■衛澤 創(えざわ・そう)
和歌山市出身。文筆家。随筆・小説を主に書くが特に分野にはこだわらず頼まれたものを書く。
性同一性障碍者。足掛け15年かかって性別適合手術をすべて終え、その一方で性的少数者の自助グループに関わって相談業務などを行う。
性同一性障碍であると同時にゲイでもあり、「三条裕」名義でゲイ小説を書くこともある。
個人サイトに性別適合手術の経験談を掲載しているので、興味がある方はどうぞ(メニューの「記録」から)。
個人サイト「オフィス・エス」http://officees.webcrow.jp/