どこも

どこも

 

その夜家に帰ってから。

ヴァルの指摘は正しいとマリアの女優の本能がささやく。

マリアは不安に落ち込むが不安の正体がわからない。

なりふり構わず、ヴァルを問い詰めます。

「マンガみたいなキャラをわたしは軽蔑するけどジョアンは違う?」

「嫉妬はやめて。見苦しい」

「だから彼女の方が優秀? 曖昧な役でも彼女は飛び込むけど

わたしは違う。だから彼女の演技を賞賛するのね」

「そう、身近に感じるの」

「わたしの演技のどこが悪い?」

ヴァルは一言のもとに「どこも」

自信に溢れたヴァルの即断にマリアは励まされるどころか、

(どうしろっていうのよ!)胸がどす黒くなる。

ヴァルの見解はヘレナを演じる核に近づいてきます。

 

(「アクトレス~女たちの舞台~」)

 

 

bn_charm