教えてくだされば買ってきます

教えてくだされば買ってきます

Tell me where to go.

 

眉間にしわを寄せて怒るキャロルにテレーズはハラハラする。

「教えてくだされば(タバコを)買ってきます」

これがまたキャロルは気にいらない。

テレーズの気遣いがわかりながら、

「そんなことしなくていい、わたしは平気よ」と突っ張り、

せきたてて追い出すように駅へ送っていく。

テレーズは年こそ下ですが、母親との縁が薄く、8歳で寄宿学校に入れられ、

卒業してすぐ働き、わずかな給料をやりくりし、人の世話にならず

暮らしてきた苦労人です。やりたい仕事もある。

待つことも譲ることも覚えてきた。

テレーズからすればキャロルが幼く見えることがある。

でもこのときは情けなかった。テレーズは帰りの列車の中で

しゃくりあげます。

 

(「誘惑者キャロル」)

 

 

bn_charm