待つわ。王妃に呼ばれるのを

待つわ。王妃に呼ばれるのを

シドニーの数少ない宮廷の友人が記録係りのモローです。

ヴェルサイユのあらゆる記録を綴り続けてきた老人。

いつも書き物をしているモローと、本を読むシドニーは気があう。

モローはシドニーが、王妃を愛するあまり、何も見えないのではと、

心配している。革命軍が押し寄せる。

「君はどうする」とモローがシドニーに訊いた。

「待つわ。王妃に呼ばれるのを」

「君らしいな」とモローはつぶやく。

シドニーが貫こうとする一途な愛に、言葉が返せない。

 

(「マリー・アントワネットに別れをつげて」)

 

 

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