可愛い腕がこんなに腫れて

可愛い腕がこんなに腫れて

朗読中、シドニーは腕をぽりぽり掻く。

王妃は目ざとく、シドニーの腕に散らばる赤い斑点を見つけ、

かわいそうに、蚊に食われたのね、と腕をさする。

王妃を見るシドニーの視線は、刺すように鋭い。

叶えられるはずのない恋は、刃のごとくとんがっている。

「香油を持ってきて」王妃は女官に命じる。

「もう効き目が…」とりなすシドニーに耳を貸さず、

王妃は香油を腕にすりこんでやる。

王妃の前で腕を掻くなんて、とシドニーは後で女官に油を絞られる。

 

(「マリー・アントワネットに別れをつげて」)

 

 

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