「人間の顔の持つ弱さ」

「人間の顔の持つ弱さ」

バーで別れた翌日の下校時。校門の前にエマがいる。

「近くまで来たから」。

アデルは興味津々、エマを見る同級生たちをおいて走り寄る。

大きな木の下のベンチでエマがアデルの顔をデッサンをする。

描きながら「人間の顔の持つ弱さ。サルトルよ」とエマ。

「サルトルは難しかった。戯曲のほうが好き。汚れた手とか」とアデル。

エマはアデルとスケッチブックを交互に見ながら、無心にコンテを動かす。

「実存主義は何か、は必読よ。入門書で読みやすい。

要するに、実存は本質に先立つの」

「動いてもいい?」「ダメ」「ダメ?」「…いい」「どっち?」「いいよ」

やばいですね。こういうしょうもない受け答えが楽しいとなると(笑)

とっくに一目惚れの域は超えちゃっていますね。

 

(「アデル、ブルーは熱い色」)

 

 

bn_charm