キャロル20160513

 

「あなたに」

出発して午後遅くダイナーに入って昼食。
テレーズがバッグから包みを出し
「メリー・クリスマス。あなたに」
キャロルが開いたのは「イージー・リヴィング」のLP。
テレーズが初めてキャロルの家のピアノで弾いた曲です。
歌っているのは不世出のディーバ、ビリー・ホリデー。
「覚えているわ、あの曲ね」
レコードジャケットを見ているキャロルに
テレーズはシャッターを切る。
「ダメよ、ひどい顔だから」
キャロルならともかく、
テレーズには珍しく有無を言わさぬ口調で
「大丈夫、ほら」とかいって、
左手でカメラを持ったまま、
顔を塞ごうとしたキャロルの手を右手でテーブルに抑える。
微妙に表情を変えたキャロルに、
ファインダーを覗いているテレーズは、それが、
自分たちの手が重なっているからだと気がつきません。
こういうところがとても子供っぽい(笑)

(「キャロル」)