「いただけます?」「もちろん」
タキシードを着たディートリッヒが楽屋でタバコをふかす。うまくもなく、まずくもない、という吸い方で、デビュー前の緊張を表す。歌が終わる。ディートリッヒは女性客のテーブルへ。髪にさしたバラを「いただけます?」。
「もちろん」相手はポ〜。ディートリッヒはシルクハットのひさしをキザに指で上げ、キスする。場内騒然、ヤンヤの拍手。
ディートリッヒのその後を語るとき、このシーンが決定的になりました。
「セルロイド・クローゼット」である女性映画人はこう言っています。
「ゲイリー・クーパーはどうでもよかった。ディートリッヒだけを見ていた」