ジェームズ・ウィルビー

誰と話しているの?

〜モーリス㉖〜

誰と話しているの? 窓辺に立つクライヴに妻のアンが近づき「誰と話しているの?」「誰とも」そういってクライヴは窓から離れる。原作は終章をこう書いています。「生涯の終わりの日までクライヴはモーリスがいついなくなったのか知らない。のみならず年老いるにつれて、そのようなことが果たして現実にあったかどうかも危ぶまれる...

「来いよ!」

〜モーリス㉕〜

「来いよ!」   スカダーは南米に行ったのじゃないのかと、クライヴが訊く。 「発っていない。何の保証もなく僕のために将来を棒に振った」 何か言いかけるクライヴに 「もう何も言うな。全てを彼と分かちあった。先のことは何も言わんでくれ」 モーリスは闇の中に姿を消した。 そして、ここはこの映...

スカダーを愛している

〜モーリス㉔〜

スカダーを愛している ボート小屋を出たモーリスはクライヴ邸に向かいました。選挙の準備で忙しそうなクライヴは、庭に立ったままのモーリスに「上がってこいよ」「すぐ帰る」そして「スカダーを愛している」と告げます。「なんとグロテスクな!」「確かにグロテスクだ。君だって」「その話は二度としないはずだろ!」厳しい声でク...

電報がついたんだね?

〜モーリス㉓〜

電報がついたんだね? モーリスは何かに導かれるようにボート小屋にきます。頭の中が混乱していた。船は出た。スカダーはいなかった。彼はとどまったのだ…ボート小屋の小さな暖炉の前でスカダーが体を丸めて眠っていました。モーリスを見て彼は驚かず「じゃ、電報がついたのだね?」「何の電報だ」「今朝、あんたの家に当てて打っ...

乗客がまだ来ないのだ

〜モーリス㉒〜

乗客がまだ来ないのだ サウスサンプトン港にモーリスは見送りにきます。出港前の船にスカダーの家族はもう乗り込んでいます。粗野な言葉遣い、貧しい身なり、モーリスは、ホテルでの一夜は悪夢だったように思える。これらの人々とともに哀れなスカダーは南米に行くのだ。しかしスカダーはいない。「乗客がまだ来ないのだ」と乗船係...

行くな。

〜モーリス㉑〜

行くな。 「じゃ、俺は行くよ」とスカダー。「行くな」とモーリス。「気は確かか」「巡り会えたことが奇跡だ」モーリスは情熱のとりこですがスカダーは冷静です。「君のお袋さんはなんというかな。金と地位を捨てるのか」「平気さ。君がいれば金や他人は必要ない。地位がなんだ。僕らには頭と丈夫な体がある」「夢だよ。モーリス。...
火

「5シリングでは不足か」

〜モーリス⑳〜

「5シリングでは不足か」 屋敷の女主人は「18ヶ月いる俺の名も覚えない。あんたは俺に、チップが5シリングでは不足かと言った。そんな奴ばかりだ。でも初めて見たときから、あんたが欲しかった。だから耐えられたんだ」スカダーは服を着ながら言います。モーリスは押し切られ、泊まりました。スカダーと離れられなくなった。そ...

今夜俺と泊まってくれ

〜モーリス⑲〜

今夜俺と泊まってくれ スカバーはイギリスを離れて南米に行くのです。二度と会えない。だから英国を離れる前に会ってくれと頼んでいます。モーリスには彼の必死な気持ちがまだわからない。貧しいから金をせびる気だとくらいに思っています。「俺は指一本傷つけない。ビタ一文、もらうつもりはない」ただ「今夜俺と泊まってくれ」モ...

俺が恥ずかしいか、迷惑なのか

〜モーリス⑱〜

俺が恥ずかしいか、迷惑なのか 「知っているぜ。ご主人とのことは」ご主人とはクライヴのこと。スカバーは身分の低い若者ですが卑屈ではない。おどおどしているモーリスに我慢ならない。「俺が恥ずかしいのか。迷惑なのか。俺をもてあそんだだけか。このままにはしないぞ。決着はつけてもらうよ。楽しんだ代金は払うんだな」モーリ...

英国を去る前にもう一度

〜モーリス⑰〜

英国を去る前にもう一度 スカバー一家が南米に移住することになり、英国を去る前にもう一度会いたいとスカバーがいってきたのです。モーリスは医師にこういう。「実は猟番と罪を犯したのです。頭のいいやつです。脅迫されるかもしれません。そいつからの手紙がこれです」手紙を見せる。「なぜあいつにわかったのか、心の隙が」つぶ...