ジェレミー・レニエ

元気な姿を見せてやってくれ

〜サンローラン⑮〜

元気な姿を見せてやってくれ   1977年、サンローラン死亡説が流れました。 誰も姿を見たものがいない。関係者は口を閉ざし、マスコミは躍起になって 生きているのか、死んでいるのか、特ダネを追いかけた。 工房にインタビューが申し込まれた。 ピエールが受けた。記者たちがぞろぞろ。ピエールが部屋...

1976年秋冬コレクション

〜サンローラン⑭〜

1976年秋冬コレクション   この映画は本シリーズの冒頭で書いたように、1967年から1976年の、 イヴ・サンローランの時代を取り上げたものです。モードの帝王がいかにして生まれたかというより、 彼は生まれ持った天才のためにどんな代償を払って きたか、素顔の「帝王」に迫りたかったのだと思...

夜のイヴは恐ろしい

〜サンローラン⑬〜

夜のイヴは恐ろしい   ピエールは公私にわたってサンローランの人とブランドを 支えてきたパートナーです。ある夜異様な気配に目がさめると、イヴが見つめ手に鈍器のようなものを持っている。 「別々に暮らすよ。夜のイヴは恐ろしい。僕を殺そうとした。 18年、愛してきた彼が心の平衡を失っていく。見た...

自分が耐えられない

〜サンローラン⑫〜

自分が耐えられない   「目を閉じると服が軽々と舞っている。フォルムや色彩が舞っているんだ。 でも目を開けると息苦しさしか見えない。自分が耐えられない」 サンローランは追い詰められていく。 もっと他に楽しむことはないのかと、わたしのような 俗物は思うのですけど。 要は満たされないのです...

かわいそうなイヴ

〜サンローラン⑪〜

かわいそうなイヴ   モデル二人が撮影のためポーズをとっています。 一人は服を着て、一人は全裸です。 「ダーリン、イヴはどこ?」「知らない。香水の名前でしかないのかも」 サンローランがあまり姿を見せないので、サンローランなんて、 香水の名前じゃない? と彼のモード界からの消滅を匂わせてい...

イヴ、彼にのめり込むな

〜サンローラン⑩〜

イヴ、彼にのめり込むな   「イヴ、彼にのめり込むな」とピエールが忠告する。 サンローランの生活の乱脈を見かねた。嫉妬ではなかったでしょう。 ピエールはパートナーであるとともにブランド「サンローラン」の運営責任者です。 脛に傷のありすぎるサンローランは忠告を黙って聞くしかない。 ピエールは...

慎み深さがとてもいい

〜サンローラン⑨〜

慎み深さがとてもいい   「君が喜ぶかと思って」ピエールが一枚の絵を持ってきます。 「有名な画家じゃないが、プルーストの寝室を描いた絵だ」 サンローランは一目見て気に入ります。 「慎み深さがとてもいい。部屋だけでなく、画家自身も。テーマから逸脱せず とても忠実に描いている。この絵の中に入...

ジャック・ド・バシュエールだ

〜サンローラン⑧〜

ジャック・ド・バシュエールだ   パーティで出会った男、ジャック・ド・バシュエール。 彼の危険な、野生的な男の匂いにサンローランは惹きつけられる。 彼はサンローランと一緒に夜な夜な、男たちのたむろする暗い街角を訪れ、 ドラッグをやり、セックスに耽る。 生活は荒廃した。ドラッグパーティでサ...

別の世界にいるのはあなたよ

〜サンローラン⑦〜

別の世界にいるのはあなたよ   母親は息子の本質を知っています。 「イヴ、別の世界にいるのはあなたよ」 「なぜそう思う?」 「現実世界とあまりにもかけ離れているわ。スーパーへも行かないし、電球も 替えられない」「替えなくてもいいものだよ」「切れたら?」 「ピエールが替える。いつだって」...

母さん、僕を愛してる?

〜サンローラン⑥〜

母さん、僕を愛してる?   お前の子供の頃の詩を見つけたわ、と母親が読んで聞かせる。 「君は幸せだ 全てを手にしている 富 美しさ 若さ  なんて素晴らしいことだ でも君はそんな人生に飽きた もう望んでいない」 サンローランが呼びかける。 「母さん」 そしてこれ以上やさしくはできないと...