行くな。
「じゃ、俺は行くよ」とスカダー。「行くな」とモーリス。
「気は確かか」
「巡り会えたことが奇跡だ」
モーリスは情熱のとりこですがスカダーは冷静です。
「君のお袋さんはなんというかな。金と地位を捨てるのか」
「平気さ。君がいれば金や他人は必要ない。地位がなんだ。
僕らには頭と丈夫な体がある」
「夢だよ。モーリス。お互いの破滅だ。諦めろ。いっそ会わねばよかった」
部屋を出るときスカダーが
「ホテル代は前払いしてあるかい。出るとき聞かれるんだ」
「払ってある」とモーリス。スカダーの貧しさに、わびしそうに答える。
愛だ、恋だという熱いシーンの一方で、冷たい現実が挟まれています。
