俺を呼んだだろ
悶々と眠れない夜を過ごすモーリスの部屋に、猟番のスカバーが窓から入ってきます。
驚くモーリスに「俺を呼んだだろ。聞こえたんだ」
テレパシーなのでしょうか。
スカパーはためらいも見せず「何も考えないで。横になって」
モーリスは長いあいだ妄想していた世界を実際に体験します。
月明かりか、星明かりか、薄闇の中の男性二人の体が美しい。
「アレック」とモーリスは猟番に話しかける。
「一生の友だちを持ちたいと思ったことはないか?」
モーリスはさびしかったのです。
自分の思いを受けとめてくれる誰もいなかったことが。
マイノリティがパートナーと巡り合える難しさは現代も変わりません。
「モーリス」が確固とした古典の位置を占め、かつ新しいのは、
時代に関係ない、方程式では解けない、データにも収束されず検索にも
ヒットしない、人間の業を描いているからです。