ときどきアイナーを殺したくなる

ときどきアイナーを殺したくなる

 

「もう彼は遠い」そうつぶやいた妻に、アイナーは、いや、

もうリリーと呼んだほうがいいでしょうが、

「ときどきアイナーを殺したくなる」

ゲルダは肝をつぶします。

グズグズしていたら、夫はアイナーを、もうひとりの自分を殺してしまう。

夫の幼馴染で、パリで画商をしているハンスに相談しました。

彼もまた数少ないゲルダの味方です。遅疑なくいいます。

「診てもらおう」

 

(「リリーのすべて」 )

 

 

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