新しい秘書奴隷、いいわね
ハバナの白昼夢に現れたママ、クラリス。
いつものように娘をねっとりと見つめ
「あの秘書奴隷、いいわね」とアガサを褒める。ハバナは油断しない。
案の定「あんたらには共通点がある」アガサとハバナのことです。
「まずあのバカ分析医。“ママ、私は強くなった、食事ができたわ”ですって?」
「何の用?」ハバナがこわい顔で訊く。
「本当にミジメ。あんたといるとイライラしてくる」
母親はハバナの潜在意識です。
「テレビで話していた事件とやらは記憶違いよ。継父があんたを
襲ったのでしょ。あんたを守らなかった私に腹が立ったのね」
「来ないで。ママ、私に近づかないで!」
「私が焼死し、自分を責めた?」
ハバナの心は過去も現在も泥沼。業のような母娘関係をクローネンバーグは
あぶり出す。監督のいやらしさもさることながら、
見栄も体裁もかなぐり捨てて、母親に取り憑かれた娘を演じるジュリアン・
ムーアは気迫の演技です。