最後に残るのは一山の骨と数本の歯
ベイコンは徹底的なリアリストです。
彼の幻想怪奇な絵は、形象のデフォルメではなく、
人間の心の歪みを描くとこうなるとでもいっているようです。
感性が異様に繊細ですから、こんなセリフがサマになる。
「彼(ジョージ)の汗ばんだ脇の下。彼の靴下。洗面台に
残されたひげ剃りのあと。彼の鍵が錠の中で回る音。
もう一度だけ彼の下で身をふるわせたい。
本物の愛に満ちたときを一夜だけ。
でも最後に残るのは一山の骨と数本の歯が関の山」
ジョージへの仕打ちは、ベイコンが自分の感性の鋭さを
持て余した結果のようにも思えるのです。