名門大など出ていません

名門大など出ていません

 

思いがけない「待った」がかかるが、スティーヴンはあわてない。

うろたえない。

まっすぐ裁判長を見つめ、こう切り出した。

「わたしは名門大など出ていません。ごく地味な学歴です。

 三流大学出の農村育ち。でも、彼と同じ弁護士です」

どう考えても指摘された異議に関係ない。

本当にスティーヴンの「すごい」ところは、

人のふところにスルスルと入り込めることです。

「この件に関しては協議が必要です」とスティーヴン。

「おいおい」相手の弁護士はあっけに取られ割り込む。

スティーヴンますます落ち着き払い

「趣旨は裁判長がお分かりのはず」

三流大学出の農村の青年が苦学して弁護士になった、

ジンときている裁判長は「趣旨」をすっかり

わかったつもりになって「釈放」を決めた。

 

(「フィリップ、きみを愛してる」)

 

 

bn_charm