Vol.7 話しに参ります

 鶏肉はももよりも胸肉の方が好きな衛澤です御機嫌よう。ぱさぱさ大歓迎。

 今年に入ってから、講演に呼んで頂く機会が増えました。

 昨年は性的少数者の周辺の動きが活発で、幾つかの自治体でパートナーシップ条例が施行されたり「LGBT」という言葉が急激に広まったり大手企業では性的少数者の従業員ための制度が設けられたりと、話題に事欠かない一年でした。
 その影響か、今年は性的少数者の問題に取り組む自治体や企業が増え、性的少数者について知りたいという団体が沢山現れはじめました。この「団体」というのは、企業であったり学校であったり市民グループであったり、いろいろです。

 私も今年はお声掛け頂くことが多く、既に何度か講師として各地に出掛けております。ご依頼頂く演題のほとんど……いえ、今年はすべて「性的少数者を理解するための基礎」を話すようにとご依頼頂いています。
 とは言うものの、世間一般のみなさんは性的少数者についてほとんど何もご存知ない、或るいは大きな誤解をしてらっしゃる、もしくはその両方であることがほとんどですので、私は更に突っ込んで「性的少数者を理解するための基礎の、その更に基礎」をお話しさせて頂くことにしています。

「基礎の基礎」っていったいどんなのよ?と思われる方もおられると思いますので例を挙げてみますと、
「同性愛とトランスジェンダーは別のものです」
「同性愛は病気ではありません」
「性(セクシュアリティ)は多様なものです」
「どのセクシュアリティも決して異常ではありません」
などなど。

 或る程度の智識をお持ちの方ならおそらく「いまさらそんなことをわざわざ言うの?」とお思いになるようなことから、先ずお話しします。
 この辺りをまだご存知ない、或るいはこの辺りで大きな誤解をしてらっしゃる方が、まだまだ少なくはありません。実際に講演に行ってお話しした後に「知ってるつもりで知らないことが沢山ありました」とか「思っていたことと全然違って吃驚しました」などのご感想を頂くことがたびたびあります。知っている人と知らない人の落差がやたらに大きいのがこの分野の特徴かもしれません。
 しかし、この辺りを咀嚼して話す人や著している書籍というのは、あまりないようです。この辺りから話し出しますと「基礎しか話せない」で時間や紙幅が尽きることがほとんどでしょうから、致し方ないことかと思います。

 それだけに需要がある、大切なことかと考えて、私はできるだけ平易な内容を平易にご理解頂けるようにお話しするようにしています。どんなことも基礎が大事。基礎さえできていれば、あとは独学でも何とかなるものです。先ずは基礎を、愉しく判りやすく。

 次に求められるのは体験談です。学生時代はどのように過ごしましたか、というお話を、特に学校関係者から求められます。学生時代に性的少数者としてどのような体験をしたか、というお話ですね。私の体験談は私にしか話せないものですし、類型的な学生でもありませんでしたので、お愉しみ頂けるお話ができているかと思います。

 ご依頼頂く演題は現在のところ上記のものがほとんどなのですが、これ等のほかにも次のような内容をお話しさせて頂くことができます。

・性別適合手術という「経験」——4回の性別適合手術とはじめての海外、そして後遺症
 乳房切除術から陰茎形成術まで都合4回の性別適合手術を済ませた私の体験。手術の内容から手術によって変わったこと変わらなかったことなど。

・死ななかったからです——虐待・うつ・性同一性障害
 実父からの虐待、うつ病をはじめとする精神疾患の発症、幼少時からの性別違和・性同一性障害……困難が重なる過去を経て、これまで生きてこられたのは何故か。半生を振り返っての話。

・勤め人にはなれなかったけど——うつという経験
 うつ病は日々の生活に幾つかの制限を設けてしまうものだが、戦わなくても乗り越えなくても克服しなくても、生きていく術はある。或る日突然動けなくなり半年の入院を経て現在に至るまで、失くしたもの得たものの話。

・無知が一人ではじめた自助グループが10年以上続いている話
「自助グループ」とは何か、まったく知らないまま立ち上げたものの、最初の3年は一人きり。それでもやめずに続けていたら……必要とする人とされる人、自助グループの意義、存在し続けるために必要なこと。10年を越える活動から見えるものを語る。

 もしも衛澤という人物とその話にご興味を持たれましたら oes@dream.jp までメールでご連絡ください。交通費さえ出して頂ければ全国何処でも話しに参ります。

Vol.1 はじめまして!

Vol.2 今回はちょっと長めに「わかやま愛ダホ!」

VOL.3 子宮の中の……?

VOL.4 一般書で知るセクシュアルマイノリティ−古典編(1)

VOL.5 一般書で知るセクシュアルマイノリティ−古典編(2)

VOL.6 一般書で知るセクシュアルマイノリティ−古典編(3)

 

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■衛澤 創(えざわ・そう)
和歌山市出身。文筆家。随筆・小説を主に書くが特に分野にはこだわらず頼まれたものを書く。
性同一性障碍者。足掛け15年かかって性別適合手術をすべて終え、その一方で性的少数者の自助グループに関わって相談業務などを行う。
性同一性障碍であると同時にゲイでもあり、「三条裕」名義でゲイ小説を書くこともある。
個人サイトに性別適合手術の経験談を掲載しているので、興味がある方はどうぞ(メニューの「記録」から)。
個人サイト「オフィス・エス」http://officees.webcrow.jp/