さびしくて、ただ無性にさびしくて

さびしくて、ただ無性にさびしくて

エマは制作の仕上げに没頭し、リーズと毎日、夜遅くまでいる。

アデルが帰っても誰もいない。同僚たちとの飲み会にアデルは行く。

何度かデートをする相手もいた。ある夜、エマが先に帰っていた。

車で送ってくれた彼はだれなのと詰問する。

「彼と寝たのね」「二度か、三度」「なぜ黙っていたの」

「よくわからない。さびしくて。ただ無性にさびしくて。

彼とはなんでもない。あなたを傷つける気はなかった、

なりゆきでなんとなく、だったの」アデルは泣きじゃくる。

「許さない。出て行って! 売女」

… 年下のアデル。エマが好きでたまらないから、

エマのいないことを、さびしがるアデル。

それをいちばんよく知っていたのはエマだったはずでは。

「許さない」とは、世界のだれがいってもいいが、

エマだけは、いってはいけない言葉だったのでは。

 

(「アデル、ブルーは熱い色」)

 

 

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