キャロル20160516

 

「キャロル、安心できる? わたしと一緒にいて。
何かにおびえているならいって。わたしが力になります。」

シャワー室から
「テレーズ、ブルーのセーターを取って」
とキャロルが呼ぶ。
「ベッドの上のスーツケースにあるわ」
セーターはすぐ見つかった。
テレーズは柔らかいセーターに顔を埋め、
ふと衣類の下に拳銃がしまわれているのに気がつく。
キャロルが車を出してから、思いつめたようにテレーズが聞く。
「キャロル。安心できる? わたしと一緒にいて? 
何かにおびえているならいって。わたしが力になります」
「どうしたの、急に。おびえてなんかいないわ」
本当になんでもなさそうなキャロルの口調にテレーズは安心する。
自分はキャロルのなんの役にも立たない、
何かにつけ、そう悲観していたテレーズが
「わたしが力になります」
というようになったのだから、
確実に心の距離は縮まってきたのね。

(「キャロル」)