キャロル20160508

 

「キャロル、自分をわかっている?」
「わかってないわ、昔も、今も」

弁護士立会の審問まで数週間、その間、
娘には会えなくなってしまった。
気をまぎらわせるために、車でどこか旅行でもしたいとキャロルがいう。
アビーは長いつきあいで、
キャロルの習性がよくわかっている。
「ひとりで運転するの、嫌いよね。彼女、若いわ」
彼女とはもちろんテレーズのこと。
キャロルは黙っている。
「キャロル、自分がわかっている?」
アビーには、キャロルがテレーズとどうなるか読めている。
キャロルはニヤッと不敵に笑い
「わかってないわ、昔も、今も」

(「キャロル」)