暗殺の森20160408

 

「止めさせましょう」「なぜ? 美しいだろ?」

ベルダルド・ベルドリッチの28歳のときの「暗殺の森」なんか、
今にしてみると、
逸脱だろうが妄想だろうが美しいものは美しい、
という彼独特の突き放し方がよく表れています。
ドミニク・サンダとステファニア・サンドレッリがタンゴを踊っている、
ジャン=ルイ・トランティニャンは恥ずかしいからやめさせようというのを、
ドミニクの夫である教授は「なぜ、美しいだろ」と聞き返す。
ジャン=ルイは幼年時代の体験から、
自分が特殊な人間であり、
そのカモフラージュのためにフツーを装って世間に溶け込もうとしますが、
ベルドリッチの最後のどんでん返しは残酷で、
彼こそスノッブ(俗物)の最たるものという現実を突きつけます。
教授とドミニクは暗殺されます。
ベルドリッチは、美しいものを長生きさせたくないみたいでした。

(「暗殺の森」)