週末はマンガでエンジョイ!ーRikiのおすすめコミックー

杉浦日向子「百日紅」ちくま文庫全2巻

 

浮世絵師の葛飾北斎とその娘であるお栄を中心に、二人に関わる実在の人物たちを生き生きと描いている。芸術、恋愛、風俗などいろんな要素がありながら、なんとも不思議な漫画である。

杉浦日向子を知ったのは、NHKで放映されていた番組「お江戸でござる」に江戸風俗研究家としてお芝居内の時代考証的なことを本当にわかりやすく、面白おかしく指摘していた。46歳の若さで病没した惜しい作家だが、あの可愛らしい、下ぶくれの、クリクリっと動く目の彼女が情念的な漫画を残していることを知ったのは、亡くなってからずいぶん後のことだ。

最近の江戸ブームについて彼女の面白い発言がある。

《近年「江戸ブーム」とやらで、やたら「江戸三百年の智恵に学ぶ」とか「今、エコロジーが手本」とかいうシンポジウムに担ぎ出される。正直困る。つよく、ゆたかで、かしこい現代人が、封建で未開の江戸に学ぶなんて、ちゃんちゃらおかしい。私に言わせれば、江戸は情夫だ。学んだり手本になるもんじゃない。死なばもろともと惚れる相手なんだ。うつくしく、やさしいだけを見ているのじゃ駄目だ。おろかなりのいとしさを、綺堂本に教わってから、出直して来いと言いたい》

題名の「百日紅」は

千代女の「散れば咲き散れば咲きして百日紅」からつけられたそうだ。

ここにも彼女の江戸への情念がある。

2015年原恵一監督によってアニメーション化アヌシー国際アニメーション映画祭の長編アニメーション部門で審査員賞を受賞。第19回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門・審査委員会推薦作品にも選ばれている。