「わたしたちはここにいる」奈良の性的マイノリティの声を集めた冊子を作成

 「性と生を考える会」(奈良)代表の中田ひとみさんは、ある時「あんな人、テレビの中だけで、奈良にはおらんやろ」という言葉を聞いて、テレビの中で受け入れられていることと、現実の理解は別なんだと感じたといいます。

「男女のどちらか、異性愛が前提の社会制度の中で、性的マイノリティは『いないこと』になっています。そのために、多くの人が隣にいるのに気がついていないのかもしれません。でもクラスや職場や地域、もしくは家族にもいて、様々な困難を抱えているのかもしれません。また、そんな当事者の力になれば」との思いから「奈良県内に住み(出身含む)自分を性的マイノリティだと認識する人たち」14人の声を元にした冊子を2015年11月に作成しました。項目は「学校・職場・社会生活の中での不便、困りごと、医療機関・福祉事業所について、恋愛・パートナーシップ、家族・友人」に分かれ当事者の体験や思いが綴られています。
ユニークなのは、当事者が自身の「性別表現、からだの性別、心の性別、好きな人の性別」を表に記入した「わたしの性別表」というページで、そこからは男女どちらかの項目におさまらない、多様な性のあり方が見えてきます。

「保守的な奈良のような地方都市では、性的マイノリティはさらに暮らしづらさを感じているのではないかと思います。実際、故郷を出て暮らす人もいますし、奈良に住み続けるために本来の自分を隠している人もいます。性について考えることは、自分自身や意識を振り返ること、自分の人生や生き方を考えること、人や人との関係性を考えることにもつながります」
中田さんは出来たての冊子を手に取りながら「性的マイノリティが生きやすい世の中は、その他の人にとっても住み良い街になるはず」と締めくくられました。冊子は1冊100円で販売されます。

制作:「性と生を考える会」 制作実行委員会

発行・販売:一般財団法人 奈良人権部落解放研究所
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