今も残る前時代的考え方

 「同性愛」の考え方は、歴史とともに変化してきています。

 その昔、同性愛は「犯罪」でした。「ソドミー法(特定の性行為を性犯罪とする法律)」があった18世紀にも同性愛は「犯罪」とされ、アイルランド出身の詩人・作家・劇作家であるオスカー・ワイルドは、同性愛の罪で牢屋に入れられています。

 19世紀になると「病気」とされました。同性愛は精神疾患であり、電気ショック療法などの治療が行われたのです。コンピュータの父と呼ばれたアラン・チューリングは、ゲイだということでホルモン治療を無理やり受けさせられ、それを苦にして自殺したと言われています。ただし、1990年WHOは「同性愛はいかなる意味でも治療の対象とはならない」とし、1994年には日本も厚生省が同基準を採用しています。

 20世紀は「変態」だと考えられていました。ドイツではナチスが同性愛者を強制収容所で虐殺し、イギリスでは子どもに悪影響だからと同性愛者は公立学校の先生になれない法律がありました。アメリカでも軍隊で同性愛者だと知られたら除隊になるという慣例があったのです。(現在はいずれも廃止されています)

 21世紀になってやっと同性婚法・差別禁止法が次々成立し、「人権」が尊重されるようになりました。2011年には、国連人権理事会でLGBTの権利に関する決議が採択され、日本も賛成しました。2013年には、国連でLGBTの人権に関する官僚級会議が開催され、日本も参加しています。まさに、「差別こそが違法」という時代になったのです。

 しかし、こういう歴史を学ぶ機会がなく、とっくに21世紀にも関わらず、前時代的考えのまま正されていないケースが目立っているのが現状と言えるでしょう。